二十年来お世話になっているD先生のご自宅に新年のご挨拶に伺った。
先生には春風社時代、何冊も本をださせていただき、今も原稿を依頼している。
ご主人が亡くなられてから小高い丘の上で一人暮らしだ。コンクリートの階段が玄関まで15段ある。
『この前はごめんなさいね。お粗末なおもてなしをしてしまって』
『今日はいろいろ作ってみたので召し上がって』
テーブルいっぱいにお料理が並べられて、アルコールと一緒にいただいて、もうお腹一杯!
わたしにとって気がかりは先生のご健康である。
80代とは思えないほどお元気でPCを使いこなし、週に一度は仕事にお出かけになり、毎日ご近所にラジオ体操に行かれているとか。
が、わたしを含め、明日はどうなるか分からないのが身体のこと。
緊急連絡先を見せていただいた。お子様たちの電話番号が書いてある。それをわたしは書き写した。
わたしが一番近い所に住んでいる。
『先生、何かあったらわたしにご連絡ください。すぐ駆けつけますから』
D先生はうん。うん。とうなずかれた。
わたしの80代はこうはいかないだろう。
我が強く面倒くさがりで、孤独のうちに老後を迎える気がする。
窓の向こう、新幹線がゆるく通り過ぎるのが見えた。