日常の生活に眼鏡はいらないが、最近細かな文字が極端に読みづらくなった。
文庫本を数十頁読もうとするだけで、もう集中力が続かない。
久しぶりに眼科に行ったら眼鏡で補うのは無理との診断。
というのも、数年前からわたしは角膜に汚れがでる目の病気をもっていて、
名医と呼ばれる先生に手術してもらったがよくならなかった。
その頃はなんとかしたいと躍起になり白内障の手術までしたが変わらない。
中心の、触ると危険なところに汚れがあるのだ。
そのうちあきらめた。
映画に走った。
が、いつも頭の片隅にこれではいけないという思いはあった。
「わたしは出版の仕事をしているのだ!」
「なんとかせねば!」
一念発起して、ルーペのショールームに行った。
まばゆいほどの多種のルーペがそこには並んでいた。
案内されるままに、眼鏡型のルーペを10種類ほどかけたり外したりして、やっと1つに絞った。
疲れたぁ。
そのルーペで、谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』を読む。小説教室の宿題だ。
なんとか最後まで読み終え、結びの文章に唸った。
「われわれが既に失いつつある陰翳の世界を、せめて文学の領域へでも呼び返してみたい。
〜〜試しに電燈を消してみることだ。」