ぼちぼち日録

絲みち

2023年02月16日

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数年来連絡のとれなかった友人から電話。声が弾んでいる。

 

「私のこと、わかる? 春風社さんから刊行された『絲みち』ってあるでしょ。あの本、娘(慶應の先生)の知り合いが論稿を執筆するのに、とても参考になったそうよ。すごくいい本だって。あなたの名前と連絡先が挟んであって。こんど電話するそうよ」

 

2017年発行。著者は吉住小三代さん。

能の梅若家に出生、三味線の演奏家であり「長唄」の保持者でもある。

 

 

担当編集者には新人の女性が起用された。

伝統芸能の紹介だけでなく、吉住さんの自分史的な要素を盛り込んだものにしようということになったが、構成だてが決まるまで試行錯誤のくり返し。ふたりで何度も吉住家に通い、インタビューし、吉住さんに近づき、長唄の世界に親しんでいった。

 

わたしはそばで見守る役目でしかなかったが、新人編集者の若い、やわらかな感性でステキな本に仕上がった。経験豊かなベテランだからいい本になるとはかぎらない。

 

本は市場に出たあと、勝手にひとり歩きする。どこでだれの目にとまるかわからない。

 

 

彼女はその後退職。うわさでは他の職種についているとか。

 

あの一時期、彼女と共有した時間は、何物にも代えがたく感じられ、キラキラ輝くように、よみがえる。

思い出になってしまった今だから感じるのかも知れない。