飯田橋でS出版の社長と打ち合わせをする。その後寿司屋でご馳走になった。
ここは私にとって特別の街だ。
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20歳のころ上京し、初めて勤めた会社は飯田橋にあった。
神楽坂に寮があり、家賃は12000円だったと記憶している。
休日のある日、近所を散歩し、目の前に白亜の新潮社をみつけて感動した。
まさか20数年後自分が出版社に身をおくことになろうとは夢にも思わなかった。
懐が寒くなると飯田橋から神楽坂まで一駅歩いた。
新聞の求人広告をみて製本屋で日雇いのアルバイトもした。
誰も頼れない。頼らない。
でも怖いものは何もなかった、青春の日々。
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寿司屋をでたら小雨が降っていた。傘をささず駅まで歩く。
思い出の飯田橋はもはや遠くなってしまった。が、自分との合わせ鏡のように存在する。