いまいちばん会いたい人、会って楽しい人は宗くんだ。
宗くんは隣町に住んでいて2、3週間に一度、市川の我が家に父親(甥)と一緒に遊びにくる。
生まれた時から成長の変化を見ているが、興味が尽きない。
今は小学6年生になり、背は私を追い越している。
夕食を一緒にたべ、ひとしきり皆でおしゃべりをした後、私はiPadで映画を見始め、宗くんはゲームをやり始める。
途中で気がつく。
もっと宗くんと時間を共有しなければ。
「最近本を読んでる?」
「うん……」
「何か面白い本あった?」
「じゅうねんや!」
「何それ? どんな字を書くの?」
「10年に屋根の屋」
「へぇー。どんな風に面白いの?」
「……」
「オバちゃんが最近読んですっごく面白い物語があって……読んでみて!」
(『野バラ』を手渡す。)
「うん」
宗くんはすぐ読み終えた。
「どうだった?」
「うん……」
「なんかよかったでしょ?」
「うん。なんかよかった」
『十年屋』を読んでみようと思う。