ぼちぼち日録

やさしい雨

2024年08月30日

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武蔵小杉での用事を終えて、外に出るとひどい雨。

 

濡れるのを覚悟で駅の方向に走り出したが、

ひょいと向こうをみたら良さげな飲み屋風の看板が目に入った。

急に気が変わった。この店に入ろう!

 

こぢんまりした店内に客はなく、ひょろっと背の高いおやじさんが迎えてくれた。

ビール、山菜の天麩羅、焼いたサワラを注文する。

どれも旨かった。

 

大袈裟ではなく、店主の人生が沁み込んでいるような、そんな味。

 

「私は今年80歳になってね。この店を始めて30年。中学、高校はこの辺の学校だったんだ。その頃は一面畑でね・・」。

 

駅近のタワーマンション、小洒落た店をつまらなく感じていた私に、

昔の武蔵小杉の風景は刺激的だった。

 

おやじさんの話は続く。

「山が好きでね。休みの日はあちこちの山に行くんだ。山小屋を持っててね、今は孫と行くのが楽しみでねぇ・・」。

 

楽しかった。最高の雨宿り。

 

    *   *   *   *   *   *

 

数日経ち、そんなことがあったと友人に話したところ、

 

「うちの小6の息子がね、この前親切な方と出会って・・雨の日、傘をささないで歩いていたら、中年の男性が傘をさしてくれて・・僕は車だから持っていっていいよ、とその傘をいただいてきたの」。

 

雨は、やさしい物語を生む。