自由が丘駅前に「自由が丘デパート」がある。
昭和の時代を思わせるレトロちっくな地下1階地上3階だての商業ビルだ。
1階は小さな店舗がぎっしり並んでいて時々買い物をする。
が、2階はというと、実のところ上がったことがなかった。
飲食店フロアらしいが、おんな一人では入るのを躊躇するような黄昏れ感があった。
ある日、勇気をだして階段を上がった。
ひしめくようにバー、寿司屋、飲み屋、焼肉屋などが連なっている。
一軒一軒そおっと覗きながら、自分一人でも入れそうな店を探した。
あった!
「発酵居酒屋 麹料理ごはん」。
おそるおそるドアを開けると、カウンターだけの落ち着いた店だった。
中年男性が真ん中に座ってオカミさんらしい人と話している。
目を引いたのは、女性の白いかっぽう着姿。
亡くなった母を思い出した。
いつもかっぽう着を付けていて服装の一部になっていた。普段は柄模様のそれだったが、何か大事な場面では白いかっぽう着になった。
その姿はシャキッと緊張感があり、子どもの私に「おんな」の部分を覗かせてくれた。
甲斐甲斐しさ、清潔感、色気と・・母親にスッポリ包まれるような懐かしさと・・そんな白いかっぽう着。
ここに通うことになりそうだ。