それは突然現れる。そして、あっと声がでる。
先日「赤羽橋」という馴染みのない駅に降り立った時も、そんな風に現れた。
上京した1960年代、聳え立つ東京タワーを初めてみた。
震えた。
あぁ〜私の新たな人生がここから始まるんだ!
1958年に開業されたというそれは雄々しく、時には哀愁を帯びた姿で、
私たちの日常に寄り添うように存在している。
関西に出張した帰りは、新幹線から見える東京タワーに「お帰り!」と声をかけられているような気になる。
リリー・フランキーの自伝的著作『東京タワー オカンとボクと時々オトン』は名作である。
彼が炭鉱の町筑豊から上京し、何者でもない時代を経て、何者かになっていくあいだ、
いつも東京タワーが傍にあった……
時にその様は切なく、涙を誘う。
夢を求めて東京にやってきた人々は自分と重ねたにちがいない。
今やマルチに活躍しているリリー・フランキーは
どんな気持ちでそれを見上げているのだろう?