標記の本がいよいよ刊行の運びとなった。
著者・舘下徹志、出版社・青灯社、コーディネート・カンナ社。
本書は、太宰作品の中でも一般的にはまだあまり知られていないであろう中・後期の小品を中心に14編を取り上げ、
それらを、著者が注目するいくつかのキーワードに従って深く考察した、意義ある作品論である。
これまで論じられてきた太宰論とは別格の清新さがある。
作品論を通して、ぼんやりとではあるが、心中へと至った作家その人が見えてくる。
読み終えた後には、「なるほど」と、作家以前の太宰治という一個人への理解が深まった感がある。
ハードカバーでなくソフトカバーとしたのは著者の意向だが、
それによって手に取り易く、読者がそれぞれ等身大で向き合える文学論となったように思う。
多くの方に読んでいただきたい。