ぼちぼち日録

ピーマンとイケメン

2025年05月10日

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小雨が降るなか、私は中目黒商店街を歩いていた。

 

ある店先にピーマンがぎっしり詰まった大きな箱が2つ置いてあり、

マジックで「詰め放題400円」と書いてある。

その前で男が一人腰をおとして、店の女性とレジ袋にピーマンを詰めている。

 

私は思わず「安い !」と声をあげた。

男が振り返る。

(オォ ! イケメン)。驚くほどイケメンだ。30代半ばくらいかな?

 

男は「無農薬だって。あなたの分まで買ってあげますよ」と言う。

(え?! 通りすがりの私に?)

びっくりして一度断ったが、彼が怪訝そうな顔をしたので、厚意に甘えることにした。

 

私は気をよくして、

「イケメンさん、もしかしてテレビとかに出ている人?」と言うと

「いえ・・」

「ハーフ?」

「そう言われるけど、違う」と。

次に私は店の女性に、

「どうしてこんなに安いんですか」と聞くと

「規格外だからよ」「時々でるのよ」と。

3人でしばしオシャベリをする。

 

しばらくして男は800円を払うと、レジ袋いっぱいのピーマンを手に帰ろうとした。

女性は「待って」と奥から茶色の紙袋を持ってくると、

「電車に乗るんでしょ」とピーマンをその紙袋に入れて渡した。

男は帰っていった。

私は、ありがとうと手を振った。

 

大阪から来たという彼は、これから葛西の知り合いのところに行って明日帰るという。

もう会うこともないだろう。

 

都会の片隅の、ほっこりした一時だった。